元柔道女子のメダリストの本。
スポーツ、そしてそれに関連する論点について、メダリストの意見が書かれている。
まず、思うのは
当たり前だが、メダリストクラスの人間になるということの厳しさだ。
もちろん抽象的にはわかっているが、この事実に本当の意味で、あらためて気づかされる。
それに比べると東大に入るほうがよっぽど簡単だ。
そして次に「これはいいな。たしかにそうだな。」
と思ったのは
「子育てとして得意なことだけをさせない」
ということ。これは大事なのではないか。
私自身もスポーツが大好きな人間だが、
勉強もそれなりにしていた。そして大人になった今、そのことがよかったと思っている。
一時期は、スポーツによる高校推薦の話もあったが、その話には乗らず
結果として勉強もさかんな高校に行った。
これは本当によかった。
そしてもう一つ、この本では「女性」という視点からも書かれている。
特にスポーツの世界では、男性が優遇される。その中で女性として
競技を続けて、メダルまで取るということは、かなり厳しい道であったと思う。
最後にこの本でよかったと思うシーンを一つ紹介。
著者は女子の柔道家として、輝かしいキャリアをほこり、
大学では男性だけの柔道部に入部する。
そこで、一人の男性のことが書かれている。
この男性は、柔道が弱かった。段取りでも負けてばかり
というよりも勝っていない。
そんな彼だが、
柔道部をやめなかったのだ。
彼は柔道が好きだったのだ。
ともすれば、勝利至上主義の現代社会で
この話はどこか
私たちが忘れていたことを
思い返させてくれる。
お勧め度 ★★
東京 中央公論新社